私はいつも、お昼休みにひとつ上のフロアにあるコーヒー自販機へ、コーヒーを買いに行く。
高速道路のサービスエリアにあるような、おしゃれな音楽は流れないけれど、抽出には30秒ほどかかる。その間にコーヒーのいい香りが漂ってくる。
ある日、いつものように並んでコーヒーを買ったら、薄くて、ほとんどお湯のようなコーヒーが出てきた。
『えっ!』と驚いたけれど、こんなこともあるのかなと思い、薄いコーヒーを持って帰ろうとした。すると、隣にいた女性が話しかけてきた。
『私も同じだったので、自動販売機に貼ってあった番号に電話しました。返金してくれそうなので、一緒に返金してもらいましょう』
『ご面倒でしょうから・・・』と言うと、『大丈夫です。返金されたら、お届けに行きますね』とその女性は言ってくださった。私は部署名を伝え、その場を離れた。
それから数日後、その女性が返金分を届けに来てくれた。
それがご縁となり、私たちはお昼休みにコーヒーが抽出されるまでの短い時間、いろいろな話をするようになった。
『今日はお天気が悪いですね』
『今日は忙しいですね』
そんな他愛もない会話だった。
周りの友人に、『コーヒー友達ができたよ!』と話しても、あまりピンとこない様子だった。
けれど、私にとっては大切な時間だった。
ある日、彼女が別の場所へ異動することになったと教えてくれた。
その後、1ヶ月ほどで異動の日を迎えた。
最後にご挨拶に行こうと思っていたら、彼女のほうから来てくれた。
私は小さなプレゼントを用意していて、渡そうとすると、彼女もプレゼントを用意してくれていた。
思いがけず、お互いプレゼント交換をすることになった。
『あっ!』
もらったものを見て、私たちはお互いに笑ってしまった。
二人とも、ドリップコーヒーとお菓子のセットを贈りあっていたのだ。
『やっぱり私たちはこれですよね』
そう言って、『これからもお元気で』と挨拶をした。
その後、お会いすることはなくなってしまった。
寂しくはあるけれど、もしまた戻ってこられたら、ここで会えるかと思うと、ワクワクしている。


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