駅前の商店街に、小さなお肉屋さんが
あった。
仕事帰りに時々立ち寄るお店で、
夕方になるといつもおじさんがいて、
必ず『おかえり!』と声をかけてくれた。
一番のお気に入りは、手作りの焼き豚と
国産牛の切り落とし。
お肉屋さんの良い部分の切り落としだから、とても美味しかった。
食べ盛りの子供達のために、牛肉の切り落しを600g、
翌日のカレー用に豚ロースを300g。
1キロ近く買うこともあった。
そんな時、おじさんはいつも
『いっぱい買ってくれて、ありがとうね』
と言ってくれた。
子供たちもそれぞれの暮らしになり、夫婦2人の生活になると、
以前ほどお肉を買うことも少なくなった。
お店の前を通っても、立ち寄らない日が増えていった。
久しぶりに立ち寄ったある日、おじさんが、
『今までいっぱい買ってくれてありがとうね!』
と声をかけてくれた。
まるで、最後のような言葉に驚いてたずねると、お店を閉めることになったという。
それから数日で、お店は静かに閉まってしまった。
いまはスーパーで買い物をすることが多くなった。
買い物はできるけど、『おかえり!』と言ってくれる人はいない。
そう思うと、少し寂しい。


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